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視覚障害者の企業での就労 [日記]

3月6日、第2回視覚障害者雇用・就労連続講座に参加してきました。
今回は主に企業の採用担当の方々に向けての内容ということでしたが、会場は満員で、関心の高さに驚きました。

最初に、視覚障害者による音声パソコン技能発表がありました。丁寧な説明と実演の効果を再認識しました。
私は自分も全盲なので、ボランティアの方々を対象とした講習会や、介護福祉士養成専門学校での講義の際に、目が見えなくても“できる”ことを強調してしまいがちでした。「目が見えなければ何もできない、かわいそうな人」といった思い込みを改めてほしいという気持ちがいつも先走っていました。
 けれど、どのようにして可能なのかという過程を示しながら焦らずに理解を求めることも大切だと学びました。

東京経営者協会雇用相談室の方による基調講演では、企業に対する障害者雇用の割り当て率が次第に引き上げられ、CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法律や規則などに従って活動を行うこと)の観点からも、さらなる障害者雇用への取り組みが企業の差し迫った課題となっている実情がうかがえました。
確かに、最近は比較的障害の軽い人たちの雇用がだいぶ進み、特例子会社での知的障害者のまとまった雇用も一般的になってきました。
そして、全盲または、それに近い重度の視覚障害者の事務職での採用も少しずつ検討され始めたようです。企業内にコンピュータやイントラネットが普及してきたことも追い風になっていると思います。
ただ、視覚障害者がコンピュータを駆使できたとしても、普通の人と全く同じというわけにはいかないため、担当可能な業務の洗い出しには各企業とも工夫されているようでした。

そのあと、重度の視覚障害者を雇用して間もない企業の人事担当の方々が、よかったことだけでなく、事前に心配された点や現在の課題も含めてお話されたのを聞いてとても感動しました。
「全盲の人が本当に一人で会社までこられるのか、他の社員とうまくやっていけるのか不安があった」とか、「スクリーンリーダーソフトで Excel の表をどういうふうに読み上げるのか想像もつかなかった」とか、「初めの2ヶ月間くらいは気を遣い過ぎて非常に疲れた」とか、率直に語られる様子に好感が持てました。

視覚障害者が企業に就職して定着し、長期にわたって勤務し続けるためには、視覚障害者就労生涯学習支援センターのような支援機関で調整してくださる方々の存在も不可欠だと思いました。
同センターでは、視覚障害者に対するビジネスマナー研修やパソコン講習を行う一方、視覚障害者が業務を遂行するために必要な機器やソフトの活用方法、社内研修で求められる配慮などに関して、企業に出向いて助言することもしているそうです。

最後に、視覚障害者就労生涯学習支援センター代表のI先生が『企業が採りたい人を育てる』とおっしゃっていたのが心に残りました。
私も、視覚障害者のためのパソコン教室のインストラクターとして何ができるか考えながら、一つずつ実践していきたいです。


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コメント 7

ooo

とても興味深く読ませて頂きました。
大企業における特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律第44条)の活用は、近年では画期的な成果の一つかもしれませんね。

「スクリーンリーダーソフトでExcelの表をどういうふうに読み上げるのか想像もつかなかった」ということや、「気を遣い過ぎて非常に疲れた」など、視覚に障碍を有する人々を極端に特殊な人々であるかのような認識は、直接に接する機会が少ない人々には自然な反応なのかもしれませんね。

このところ、そのような人々の内部にこそ障碍があるのではないかとさえ思うことが多々あります。高齢者・障碍者の雇用促進のための公的機関の職員にさえ、それを感じます。

スクリーンリーダーなどの支援技術を体験できる機会は、対象を障害者だけでなく広く一般に提供することも、雇用する側が思い抱いている高い壁を低くする一方策になるのかなぁと考えて提案したことがありますが、なかなか…。
by ooo (2008-03-12 00:05) 

ooo

読み返してみて、少し違和感がありましたので訂正させてください。
「そのような人々の内部にこそ障碍があるのではないかとさえ思う」の部分ですが、どうも障碍が害悪であるかのような文章に感じますが、そのような意図は全くありません。失礼しました。
「現状の社会では自然に形成される認識かもしれないけれども、その社会的環境から生じた心裡的障碍」…う~ん表現したいことが言葉になりません。
by ooo (2008-03-12 00:21) 

寅

 oooさん、接したことのない人々を特殊であるかのように認識することは、人間の
自然な反応だと思いますよ。私も子どもの頃から、外国人、障害者、芸能人、美人などを
特殊に感じていて、長い人生の中で少しずつ、それを修正してきたような気がします。
by 寅 (2008-03-12 01:13) 

清沢友加

oooさん

 重度の視覚障害者だから仕事などできないと決めつけて門前払いするのではなく、採用を前向きに考えてくださる企業が増えてきたのはありがたいです。
障害のある私たちも、日常の中で嫌なことが多少あっても、健常者の人たちは障害者に理解がないとか、自分はいじめられやすいとか、そんなふうに悲観的にとらえないことも大切だと思います。

 そういえば、目の見える人たちも外国語を学ぶ際にその言語に対応したスクリーンリーダーソフトを使えば読み方の勉強にもなるからいいんじゃないかと、知り合いの人から言われたことがありました。私は、その人の発想の柔軟さに感心しました。
by 清沢友加 (2008-03-12 22:18) 

清沢友加

寅さん

 私も、自分と違う人々に先入観を持たずに接することのできる人間でいたいです。
 近頃は、ブログをはじめとしたメディアを通じて、さまざまな立場の人たちがそれぞれの思いや意見を社会に向かって直接発信できるようになってきたのも好ましい傾向だと感じています。
by 清沢友加 (2008-03-12 22:20) 

かのぴこ

お久しぶりです〜
私も興味深く読ませて頂きました。皆さんのご意見もとても興味深いですね。

>ブログをはじめとしたメディアを通じて、さまざまな立場の人たちがそれぞれの思いや意見を社会に向かって直接発信できるようになってきた

そのおかげで友加さんともお知り合いになれた事ですし、本当に有り難いことです。

私ははかがやきパソコンスクールのセミナーに参加する前までは視覚、聴覚障碍の方と接する機会は全くありませんでしたし、どう接したらよいのか皆目見当がつきませんでした。ですので参加前にどういう配慮が必要で、好ましいのかなどをネットで調べて行きました。私の支援センターはネットだったわけです(笑)

それに、私は手話はできないとか、出来る事と出来ない事の洗い出しというのもやっぱりやっているわけで、同じ事なんだなぁとつくづく思いました。

でも現実社会ではそうすんなりと行かない事もあるんでしょうから、企業や支援団体には技術や補助をしっかり活用して欲しいですね。
by かのぴこ (2008-03-16 12:52) 

清沢友加

かのぴこさん

 私も、かがやきパソコンスクールに伺った時は耳の不自由な方々とどう接したらいいかわからず、なんというか、肩に力が入っていました。けれど、手話や筆談ができない私でも周りの方々に通訳していただいて話ができました。そして、聴覚障害のある方々が、目の見えない私たちに新聞記事を読んでくださったり、食事に行く際にも誘導してくださったりしました。お互いに、気持ちがあればなんとか通じ合えるものなのだなと感じました。

 ところで、障害者を雇用する際の助成金制度や支援機器に関しても、ハローワークから企業に情報がスムーズに提供されるようになってきたことも、視覚障害者の雇用を助けていると思います。
また、人事担当の方々が、すでに視覚障害者が雇用されている企業を訪問して見学したり、企業内で障害者への理解を普及するよう啓発したりもなさっているそうです。
特に障害があると自分の努力だけではどうにもならないこともありますから、以前よりも周囲の人たちの協力を得やすくなってきたのは大変ありがたいです。
by 清沢友加 (2008-03-21 16:10) 

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