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『第五番』 [日記]

久坂部羊さんの医療ミステリーです。急に流行し始めた新型カポジ肉腫の原因と感染経路を探る話と並行して殺人事件が起ります。
著者は医師だけに、新型カポジ肉腫の症状が実際に見てきたようにリアルに描写されていて感心しました。
医療のあり方や刑法39条についても考えさせられる作品です。

私は心情的には、善良な為頼医師に近い部分もあれば、手段を選ばない白神医師に共感してしまうところもある。
可能性の高いことが必ず現実になるとは限らない。
良さそうな道に進んでも予想外の苦労や災難に見舞われたり、絶対絶命の状況でも思わぬ救いが現れたりするのが人生なのかもしれない。
一方、そこにいる(いた)のが誰なのかを体臭で識別できる人はいるのだろうか。そのくらい嗅覚が発達した人がこの小説の中に出てきたので。
医学は発達したとはいえ、治療しても治らない病気や障害はある。それらに対してどう向き合っていくかは永遠の課題のような気もする。
患者の家族やマスコミからいろんなことを言われた医師が、延命治療を続けている患者の死を願っている自分に気づいて愕然とするシーンはなんだか滑稽なほど淡々と書かれていた。その患者というのも医師なのだが。
それにしても、まじめで常識的な人は他人の狡猾さや異常性に気づきにくいのではないだろうか。
快楽と洗脳と芸術の密接な関係を示唆する伏線もよかった。


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